War-Gamers Advent Calendar 2017 12月20日

「会戦級の独ソ戦ゲームで戦場の霧を楽しむ」
(Clash of Arms : Borodino '41)


 唐突ですが”戦場の霧”って、何でしょうね?
 Wikipediaから引用させていただきます。
 
 「戦場の霧(せんじょうのきり、英: fog of war)とは、作戦・戦闘における指揮官から見た不確定要素を言う」

 「戦場において常に完全に状況が把握できるほど情報が揃うことは歴史的に見れば極めて稀であった。なぜなら地形や自軍・敵軍の状況、行動を完全かつリアルタイムに指揮官が把握することは技術的な観点から不可能であったからである。
特に敵情については非常に流動的であるため、常に更新の必要性と情報の不完全性がつきまとい、指揮官が充分な根拠と確信を以て意思決定することを妨げてきた。クラウゼヴィッツはこれを「戦場の霧」と呼んだ」 (引用おわり)
画像

 米国Clash of Arms社から、「Borodino '41」というテーブルトップウォーゲームが発売されています。
日本国内のウォーゲーム通信販売専門店で入手が可能です。
このゲームは1941年10月のモスクワ郊外、ボロディノ古戦場の周辺で発生したモスクワ街道(ワルシャワとモスクワをつなぐ大街道)をめぐるソビエト軍と侵攻ドイツ軍との戦いをシミュレートするテーブルトップウォーゲームです。

 このゲームを紹介するにあたって、まずはルールブック冒頭の序文が迫力に満ちて充実していますので引用させていただきます。

 「SS自動車化歩兵師団ダス・ライヒと第10装甲師団は,ソヴィエトの西部方面軍と予備軍を包囲する外郭戦力から分離してDorochova(Dorochova = 地名)に向かうように命令を受けました。それはモスクワまでもうすぐの場所で強力な抵抗は予想されていませんでした。

 しかし,すでにStavka(Stavka = ソ連軍総司令部)がかき集めることができた部隊の全てが,それらを阻止すべく急行していました。いくつかの戦車旅団は,ドイツ軍のモスクワへの前進を遅らせる役割を演じました。士官学校部隊はやって来る戦車の前に自身を投げ出すために行進し,ウラジオストックからヴェテランの第32狙撃兵師団が,遙かシベリアを越えて列車が全速で他の全ての交通を押し退けて急行し,Stavkaの隠し札となりました。

その後ドイツ軍は,泥濘だけがその鉄の爪からモスクワを救ったと主張していますが,ワルシャワからモスクワまでの1本の全天候道路の戦いの考察は,実際に何が起こったのかを非常に鮮明に表す画巻物です。


 Borodino '41は,この壮大な戦闘を各ヘクス1/2マイル(800m) で大隊/中隊規模のユニットにより,1ターン1日の枠組み(5~6のイムパルスを含む)を使用してあらわします。1戦力ポイントは,大雑把に100人の兵士,5~6両の戦車,砲6門をあらわします。2つの優秀なドイツ軍師団がソ連軍の最良狙撃兵師団の1つに直面する,巨人達の激突がここにあります。もしも他のウォー・ゲームからの経験があなたを戦車万能に導いているとしたら,あなたは,ドイツ軍と同様にBorodinoにおいて目の覚める経験をすることでしょう」
(引用終わり)

"士官学校部隊はやって来る戦車の前に自身を投げ出すために行進し"
"遙かシベリアを越えて列車が全速で他の全ての交通を押し退けて急行し"
"2つの優秀なドイツ軍師団がソ連軍の最良狙撃兵師団の1つに直面する,巨人達の激突がここに"
この序文を読むだけでも、ものすごくワクワクしてきませんか?
画像

 私がこのゲームを知ったのは、国際通信社のウォーゲーム専門誌コマンドマガジン 131号のコラムで取り上げられていたのを読んでからです。
そのコラムでは「接敵するまで両軍ともユニットを裏返して隠匿面で運用する。ダミーユニットもあり」「損害は別紙に記入」「ゲームの進行は図解が必要なほどわかりにくい」、ゲーマーが忌み嫌う要素満載で対戦相手を探すのが大変という散々な書かれようでした。
 そこで、そんな難物ならば挑戦してみよう、と思い立ち、1995年の作品ながら現在も国内で流通販売されているのを知りスグに入手したものです。
画像

  ”戦場の霧”は、本ゲームではユニットの裏面を一律の国籍シンボル印刷面として、ユニットをマップ上で裏返して運用することで再現しています。また、ダミーのユニットがあり敵軍をかく乱することが可能になっています。

 この戦場の霧が再現されているという点と、ゲームのスケール(1ヘクスは800メートル、1ユニットは例えば7戦力の場合は700人で、損害を受けると100人単位で戦闘力が減っていき、最後の100人を失うと、ユニットは除去されます)や、戦闘を解決する手順など「こういうゲームをやりたかった!」と、2017年に出会ったゲーム達の中で一番興奮しましたので、一年の締めくくりのアドベントカレンダーという機会があり、どうしても紹介したかったのです。
画像

 ゲームについて援護射撃をしておきますと、ルールそのものはそんなに難しいものではありません。
 ゲーム進行に図解が必要とは、少々おおげさな表現かもしれません。
 口頭でインストプレイというのも、情熱があれば十分可能だと思いますよ。
1日=1ターンの中身は、午前と午後、夜間の3段階に分かれており、両プレイヤーともにターンの最初にダイスを振ってその日1日の主導権を判定します。
 1ヘクスに12戦力までスタック出来る自軍の戦闘部隊を、マップの何か所で突撃を敢行させるかのヘクス数を相手に分からないようにメモをし、主導権判定のダイス目に加えることが出来ます。
合計数値の大きいプレイヤーが主導権を得て先攻めとなり、移動をしたのち戦闘を行います。
午前午後夜間の各段階の終わりには回復フェイズがあり、戦闘で混乱したり制圧された部隊の正常化への回復のチャンスがあります。
 ドイツ軍の戦車部隊にのみ、失った戦力の補充判定のチャンスがあります。両軍とも他の兵科部隊の失った戦力は戻りません。 
画像

 ユニットを裏返してゲームを進めていきますが、自軍ユニットは4ヘクス以内の敵ユニットを観測でき、観測された陣営はユニットの正体を限定的情報のみですが伝えねばなりません。
限定的情報とは、ユニットが兵員、火器、装甲を含むか含まないか、含むなら3タイプのなかから当てはまるタイプを伝えるということです。
 もしも戦闘で戦力の減ったドイツ軍の3号戦車がソ連軍に観測された場合、ソ連軍プレイヤーに伝えるのは「装甲を含みます」ということだけとなり、ソ連軍プレイヤーはそのユニットが装甲車なのか、3号戦車なのか4号戦車なのかの区別はつきませんし、戦力値も分かりません。
 しかし、その限られた情報をもとにしてプレイヤーは決断をせねばなりません。
どこにどれだけの兵力を移動させるか、どれだけの兵力を”見えない”敵にぶつけるか。
画像

 戦闘が始まってみて、初めて彼我のユニットを表面にすることで敵情が判明します。
 これって、かなり怖いですよね。
 予想外に強力な部隊だったり、意外にもろい相手だったり。
 過剰な戦力を敵にぶつけても無駄になるかもしれませんし、弱兵に大軍が足止めを食らって時間を失うことにもなりかねません。
 このゲームの中では、まさに戦場の霧の中で、プレイヤーは敵軍と戦わなければなりません。
この体験、なかなかのスリルだと思いませんか?
画像

 戦闘の具体的な手順や他のルールに関しては、ここでは省略させていただきますね。
ちなみにソロプレイですが、ゲームのマップを拡げたままで置いておくことのできるスペースがあれば、十分可能です。
例えばですが、ドイツ軍をソロで動かしたあとは、ソ連軍のソロプレイは翌日に持ち越すんです。
一晩寝ると、裏返っているユニットが何なのか…あんまり鮮明に思い出せません。私だけかな?
なお、観測のときの兵員と火器、装甲の3種類のマーカーを用意して、裏返ったユニットの上に乗せてから寝てしまえば、翌日の陣営切り替えがよりスムーズにいくと思います。私はこの3種のマーカーを大量に自作しました。
画像

 損害は別紙に記入とか、ユニットを裏返してプレイなど、少々面倒臭がられる要素なのは事実です。
でも、それらを受け入れたうえで、もしも「こんな戦場の霧ゲームがあるんだ!?ちょっと触ってみたいね」というような新たな発見につながっていただけたなら、幸いです。

 今年の暮れは、HAさんの企画”ウォーゲームアドベントカレンダー”に乗っかって、好きなことを書かせていただきました。
現在、12月19日です。これまでのみなさんの記事を、とても興味深く拝見させていただきました。
また25日までの記事が楽しみで、こちらも目が離せませんね。
ウォーゲーマーとして、思い出深い2017年の暮れになりそうです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

皆さん素敵なクリスマスをお過ごしください。

"War-Gamers Advent Calendar 2017 12月20日" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント